【全部分かる】フィリピンの社会保障・SSS編 – PHILESSONブログ

【全部分かる】フィリピンの社会保障・SSS編

フィリピンの三大社会保障の一つが通称SSS(ソーシャル・セキュリティ・システム)です。ここでは日本人が必要なSSSの知識と情報を最新の2020年度改正分も含めて説明します。

フィリピンSSSとは

SSSの概要

SSSは主に日本における年金制度にあたりすまが、一定の条件の元、障害・死亡・失業給付、また出産休暇・疾病・葬儀手当を受け取ることも可能となっています。今回は前半を年金制度、後半をそれ以外の給付や手当について解説します。

SSSメンバー

SSSへの加入義務は60歳以下の全ての労働者が対象となります。日本国籍であってもフィリピンで働く日本人にも加入義務が課せられています。余談ですがOFW(※1)も同様になります。

(※1)Overseas Filipino Workersの略で海外で働くフィリピン人労働者のこと。
SSS本部
SSS本部

加入の手続き

雇用された際に「新たにSSSのメンバーとなる手続き」が必要です(会社や個人事業者はSSSに登録が済んでいる状態であるはずですので、もしSSSに未加入の場合は確認しましょう)。
新規メンバー加入は地域のSSSオフィスで手続き可能です(※2)。雇用開始期間、給与等の必要情報をオフィスにある用紙に記入します。あとは窓口で順番を待ち、そこで手続きを行います。
通常は雇用主が行いますが、担当でも可能です。また日本人本人が一人で行うことも可能です(※3)。

(※2)オンラインでも可能ですが、オフィスでの手続きをお勧めします。
(※3 )SPA(SPECIAL POWER OF ATTORNEY)が必要です。

事業をSSSに新規登録する場合

会社や個人事業をフィリピン人と設立し、SSS未登録の場合は新規でSSSへの登録が必要です。会社をSSSに登録してから、それぞれの雇用者を新規メンバーとして加入登録することが出来ます。
新規SSSへの登録は必要書類(ビジネス許可証等)を持ってオフィスの窓口で手続きします。基本的に設立と同時に加入が必要ですが、後からでも大丈夫です。ただしその場合は設立からの未払い期間分の支払いが必要です(未払い金額にペナルティが加算されます)。

月々の支払い額

これは労働者の給与によって定められた額となります。雇用主、労働者共に一定の割合(雇用主8%、労働者4%))を負担します。金額は以下のようになります。

SSS月額支払い料金表
2019年版 ①が給与額 ②が労働者負担額 ③がトータル月額支払い額(雇用主負担を含む)

支払い方法

基本的にはSSSオフィスの窓口で支払います。その際にSSSのオンラインシステム(※4)で事前に請求書をプリントアウトして持っていくとスムーズです。このオンラインシステムは支払い状況等の管理のみで、オンラインで支払いが出来るという意味ではありません。しかしこのオンラインシステムを利用し、会社名、名前、支払い金額等が記載された用紙をプリントアウト出来ます。

(※4)オンラインシステムを使用するには事前に登録が必要です。

給付について

まずはSSSの年金制度の年金給付について確認して行きましょう。

SSSの年金給付

Retirement Benefit SSS

年金給付は基本的に定年となる60歳から開始されます(※5)。60歳から64歳の期間に労働している場合は支給されませんが、65歳からは労働しているかどうかに関わらず支給されます。

(※5)鉱山労働者を除く

給付に必要な最低加入期間

年金受給資格を得るには最低120ヵ月(10年間)の加入期間が必要となります。

加入期間が10年に満たない場合はどうなるの?

その場合はそれまでに支払った金額(雇用主・労働者両方の金額)と、その利息を一括で受け取ることが出来ます(早期支給制度)。例えば日本人がフィリピンで5年間働き、その後退職し、日本に帰る場合は手続きを行うことにより5年間支払った金額全て一括で受け取れます。

毎月の年金給付額

これは支払った期間、給与額によって異なります。計算方法は以下の①、② となり、そのどちらか大きい金額が毎月受け取る年金額となります。また12月は2ヵ月分が支給されますので、年金の受給回数は13回(13ヵ月分)となります。

SSS年金給付額計算式
平均報酬月額は定年退職直前の60か月から算出

SSS加入者の配偶者

SSS加入者に配偶者がいる場合は、その配偶者も任意で加入することが出来きます。

その他の給付

SSSには年金給付以外に、一定の条件の元、障害・死亡・失業給付があります。これらについても確認していきましょう。

障害給付について

Disability Benefit SSS

障害給付は36ヵ月以上の加入支払い期間があり、かつ治療見込みのない障害を持つ人が対象となります。全面労働不能と認められた場合は生涯にわたって、一部労働不能の場合はその程度により支給年数等が決まります。36ヵ月間の支払い期間に満たない場合は一括給付となり、就労が可能になったり、障害から回復した場合は支給は停止されます。
こちらは障害の程度によりさまざまなケースが適用されますので、SSSのオフィスで都度確認した方がいいでしょう。

死亡給付について

Death Benefit SSS

死亡給付は36ヵ月以上の加入支払い期間があり、年金受給前に死亡した加入者の親族を対象に支給されます。対象となる親族は配偶者もしくは未婚の20歳以下の未就労の子供となります(※6)。支給額は給与額によって異なります。また20歳以下の子供が複数名いる場合は1人に対して月額年金額の10%もしくは250ペソのいずれか高い方が支給額に加算されます。なお上限は5人までとなります。

(6)配偶者が再婚の場合は条件によって支給されない場合があります。また配偶者や子供といった親族が対象にならないケースは死亡した加入者の親へ支給されます。その場合の支給額は加入期間に応じて年金月額の12~36ヵ月分で、一括支給となります。また36ヵ月の加入支払い期間に満たない場合も条件により一時金として支払われます。

失業給付について

Unemployment Benefit sss

事業停止、縮小、経済状況悪化等による人員削減や天災、人災により解雇された場合や、失自己退社の場合も一定の条件(事業者からの侮辱や犯罪行為等)を満たせば失業給付を最大20,000ペソ(1回)を受けられます。 
対象者は60歳未満で、過去に36ヵ月間のSSS支払い履歴があり、かつ失業直前の18ヵ月以内に12ヵ月分の支払い実績がある者となります。ただ条件を満たしても過去3年以内に給付を受けたことのある者は対象外となります。

手当について

SSSには年金・障害・死亡・失業給付の他に、出産休暇手当と疾病手当、葬儀手当というものがあります。

出産休暇手当について

Maternity Benefit SSS

SSS加入者で直近12ヵ月で3カ月以上支払い履歴がある場合に受け取ることができます。金額は給与によって異なり、「給与の30分の1(日給)×105日分」となります。シングルマザーの場合は15日間延長され120日分となります。
流産や死産の場合でも手当の受け取りは可能で、その場合は60日間分となります。

疾病手当について

Sickness Benefit SSS

疾病手当はSSS加入支払い期間が直近の12ヵ月で3ヵ月以上ある場合に、ケガや病気により4日以上の自宅療養、通院をしている加入者が対象となります。ただこの場合は会社の有給病気休暇を全て消化している必要があります。
手当の金額は直近12ヵ月の給与の中から、高い6ヵ月を抽出し、その日給を算出(6ヵ月分の給与の180分の1)の90%が年間最大120日分支給されます。

葬儀手当について

Funeral Benefit SSS

SSSメンバー(配偶者含む)、もしくは既にSSSより年金給付を受けている人が死亡した場合はSSS支払い履歴に関わらず埋葬費用として20,000ペソを上限に支給されます。

まとめ

SSSは給与を得ている場合は加入義務がありますので注意しましょう。年金給付資格である10年以上の加入期間がある場合は、フィリピン国内だけでなく、日本でもフィリピンの年金を受け取ることが可能です。
また受給資格の10年未満でも申請すれば、早期支給制度で支払った分を一括して受け取れます
日本人はフィリピンでは当然ですが外国人となります。就業にあたっては法律を遵守しているか、関係機関から規模の大小に関わらず調査されることがあります。このSSSもその対象となりますのでしっかり手続きをして、無用なトラブルを避けるようにしましょう。
また必ず会社のSSSナンバー、自分のSSSナンバー、加入状況等の重要な情報は控え、自分の年金額を確認を行い、将来の計画に役立てましょう。

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