
フィリピンの退職者ビザ(リタイアメントビザ)は35歳から取得可能な無期限滞在ビザになります。他国と比べて低額の保証金で簡単に取得でき、希望すれば永住することも可能でとても便利なビザです。
正式名称
正式名称はSpecial Resident Retiree’s VisaでSRRVと省略されることが多いです。あえて日本語に直訳すると退職者特別居住査証となり、フィリピン退職庁にて手続きを行います。永住ビザと呼ばれることもありますが、その場合はPermanent Visa となるはずですのでやはり少しニュアンスが違います。
余談ですがSRRVは永住ビザの他、リタイアメントビザや特別リタイアメントビザ、特別居住退職者ビザなど様々な呼ばれ方をされます。
メリット
私もこのリタイアメントビザ(SRRV)を保持していますが、とても便利で取得して良かったと思う場面が良くあります。SRRVの詳細と私が特にメリットだと感じる部分をお伝えしますので参考にしていただければと思います。
1-取得が簡単
日本国籍を持つ35歳以上で、健康で犯罪履歴のない人で保証金があれば基本的に取得可能です。英語ができ、フィリピンの行政機関の対応とマニラでの土地勘があれば自分で取得することも可能です。ただ手続きをサポートしてくれるエージェント会社も多くありますので利用することも可能です。
先にSRRVについて分かりやすく説明します。SRRVはSRRVスマイルとSRRVクラシックの大きく分けて2種類あります。主な違いは補償金を投資転換可能かどうかと保証金の金額になります。※1
保証金※2
20,000ドル
申請料金
1,400ドル
更新料※3
360ドル / 年
保証金※2
20,000ドル(50歳以上年金無し)
10,000ドル(50歳以上年金有)※4
50,000ドル(35歳以上49歳以下)
申請料金:1,400ドル
更新料:360ドル / 年※3
- フィリピン退職庁(PRA)申請用紙
- パスポート
- 健康診断書(PRA指定クリニック発行)
- 日本の犯罪経歴証明書(領事認証不要・アポスティーユ証明)※未開封
- NBIクリアランス※5
- 写真(5cm×5cm)12枚
- 預金(保証金)証書の写し
- 同伴する配偶者、子供がいる場合は関係を証明する書類(戸籍謄本)
- 年金証書(SRRVクラシック保証金10,000ドルでの申請の場合)
※1. SRRVヒューマンタッチという介護や療養が必要で且つ、年金1,500ドル/月 以上があり、また健康保険等の医療保険に加入している方向けのものもあります。
※2. PRA指定銀行への定期預金となります。配偶者や21歳未満の未婚の子供の同伴が2人まで可能です。同伴者が3人以上の場合は1人につき15,000ドルの追加保証金が必要になります。
※3. 同伴者3人以上の場合は1人につき100ドルです。
※4. 月額800ドル以上(夫婦の場合は1,000ドル以上)です。
※5. 申請時点でフィリピン滞在日数が30日を超えている場合に必要になります。
2-就労も簡単
フィリピンで働く際には就労ビザを思い浮かべる人がいるかと思いますが、SRRV保持者の場合はAEP(外国人労働許可証)を取得するだけで就労が可能になります。就労ビザを取得する際にもこのAEPは必要になりますが、取得難易度は低く、さらに就労ビザの場合は仕事を辞めた場合は観光ビザにダウングレードする必要がありますが、SRRVビザの場合にはその必要はありません。※SRRVは自分でビザを解除しない限り有効です。
外国人登録証が不要
フィリピンに60日以上滞在するほとんどの外国人を対象にACR-Iカード(Alien Certificate of Registration Identity Card)と呼ばれる外国人登録証が義務付けられていますが、SRRVを保持している場合はそれが免除されています。
年間報告書が不要
フィリピンでは先ほどのACR-Iカード保持者の多くを対象に年1回 Annual Reportと言われる報告書の提出が義務付けられていますが、SRRV保持者の場合はACR-Iカードが免除されているので、この年間報告書も同様に手続きを行う必要がありません。
入国時の出国チケットが不要
フィリピンに入国するほとんどの外国人は入国時に出国チケット(航空券)を提示する必要があります。これは不法滞在などを防止する目的がありますが、SRRV保持者の場合は出国チケットは必要ありません。
出国許可証が不要
フィリピンに6ヵ月以上滞在し出国するほとんどの外国人を対象にECC(Emigration Clearance Certificate)と呼ばれる出国許可証の取得が義務付けられていますが、SRRV保持者の場合はこれも免除されています。またフィリピンの出国時に課される出国税も免除されます。
保証金が投資に使える
SRRVクラシックの場合は銀行への預けている保証金でコンドミニアムや家などへの投資資金に使うことが可能です。※条件有
預けたお金が戻ってくる
例えばSRRVスマイルの場合は保証金として2万ドルをフィリピン退職庁とSRRV申請者の共同名義で指定の銀行に定期預金として預けますが、ビザを解除した場合にはこの2万ドルはそのまま返金されます。
また何らか事情で申請をキャンセルする場合や申請が却下された場合にも保証金は戻ってきます。SRRVを取得し定期預金として預けている場合は定期預金金利が付きます。
その他
今までに紹介したメリット以外にも就学が可能であったり、家族がいれば一緒に加入できたり、免税措置を受けられたりといろいろあります。
信用力が上がる
SRRVを取得して感じたのは、仕事や生活の様々な場面で個人の信用度が高まるということです。一番分かりやすい身近な例をあげると銀行口座の新規開設する時です。
現在はマネーロンダリング防止などの関係から外国人の銀行口座のハードルは以前と比べると高くなりました。例えば観光ビザの場合、長期滞在自体はビザの延長手続きを繰り返せば最長3年間可能ですが、フィリピンの銀行口座開設は出来ません。しかしSRRV保持者の場合はその場で簡単に口座開設が可能です。
これはあくまで一例ですが、フィリピン国内での自分自身の信用力が上がるのは間違いありません。おそらく多くの外国人が観光ビザの延長を繰り返したり、不法滞在や不法労働を行ったりする社会的背景があるので、銀行にフィリピンでは大金となるお金を預け、犯罪履歴もないSRRV保持者は、身分が確かな外国人と見なされるからだと思われます。
SRRVの今後
SRRVは日本人にとって便利で多くのメリットがあるSRRVですが今後取得する場合はいろいろと変更されることも予想されます。特に保証金や年間更新料は上がる可能性があります。年間更新料は十数年前までは数ドルとかなり安かったですが、現在は360ドルと高額になっています。
あと就労に関してですが先にお伝えしたようにAEPを取得が義務づけられていますが、今後はAEPの取得が不要になる噂もあります。おそらく退職者ビザという名前ではあっても実際35歳から取得可能ですので、フィリピンで働くということも当然想定されるのが理由の一つではないかと思います。
まとめ
様々な種類のビザがあり、私も過去に全てを検討しましたが、私のように独身でフィリピンで働きながら生活する人や純粋にフィリピンで老後を過ごす人にとっては、このSRRVビザが最も適していると感じます。
SRRVの取得を自分で行わない人は取得代行エージェントに頼むと便利です。私はそれらの会社とはまったく関係を持っていませんのでここでは紹介はしませんが、永住権を謳う怪しいビザや取得困難なビザを扱っているところ、手数料が高いところも多く見受けられますのでよく注意して下さい。
重要最新情報(追記)
2020年10月24日、フィリピン退職庁はこのSRRVの発給を一時停止しました。
理由はこのビザの取得者の40%が35歳の若い中国人で国家安全保障上の問題があるということ、また中国人とフィリピン入官との間でのこのビザを巡る不正と汚職が明るみになり問題視された為です。
※発給再開見込みは未定です。おそらくビザ取得要件が見直され厳しくなると思われます。
2020年5月13日、フィリピン退職庁は同年5月17日よりSRRVビザの申請受付を50歳以上に限って再開することを発表しました。ビザの取得要件等については特に言及されませんでしたので現在時点では変更はないと思われます。ただし現在時点で外国人のフィリピンへの入国は有効なビザを持っている人だけが可能である為、実際の取得申請が可能なのはすでにフィリピンに滞在している50歳以上の外国人に限定されてしまいます。※日本滞在者の場合で有効なビザを持っていない人は、日本のフィリピン大使館で事前にツーリストビザを申請し、EED(Entry Exemption Document)と呼ばれる書類を取得すればフィリピンへ入国可能ではあります。